Danbooruは本当に違法転載サイトか?

はじめに 

最初に結論を書いておくと「実際に裁判にならないとわからない」です。私は弁護士でもなんでもない一般人ですし、これはちょっとした疑問から自分なりに調べてみたことを載せたただのコラムです。

更に言うと調べたのは日本国内における「引用」関連のことだけなので、海外でどういう扱いとなっているかは分かりません。流石に法律について機械翻訳で調べるのは限界があるので。


引用か、転載か

まず他人の著作物を転載する場合についての詳細は以下の記事を参照してください。

トップコート国際法律事務所:著作権の引用とは?画像や文章を転載する際の5つの条件・ルール


こちらの正確性については弁護士サービス事務所ということで問題ないと思われます。

そして、転載が違法とならないのは以下の場合です。


  1. そもそも著作物ではない
  2. 著作者の許可を得ている
  3. 引用
  4. 転載が許される場合(著作権法32条2項、39条、40条)

トップコート国際法律事務所:著作権の引用とは?画像や文章を転載する際の5つの条件・ルール より引用


この中でDanbooruが関わるのは3.引用のみ…と言いたいところですが実は1.そもそも著作物ではないという可能性があります。しかしこれは本題ではないので後に回します。

では引用とは何なのかというと、次の全てを満たした時に引用となります。


  1. 主従関係が明確であること(明確性)
  2. 引用部分が他とはっきりと区別されていること(明瞭区別性)
  3. 引用をする必要性があること(必要性)
  4. 出典元が明記されていること(出典)
  5. 改変しないこと

トップコート国際法律事務所:著作権の引用とは?画像や文章を転載する際の5つの条件・ルール より引用


では一つ一つ見ていきましょう。まずDanbooruにアップロードされた作品のページを見てみます。これは無作為に選んだもので、特に意図などはありません。

Danbooru:uma (original)

2022/10/05時点のDanbooruの作品ページスクリーンショット

ちょっと脱線しますが、スクリーンショットも引用になるんでしょうか?描画しているのはブラウザで、元はHTMLであることを考えると著作権が発生するのは画像部分のみな気もしますが…これも一旦置いておきます。


ではまず1の主従関係の明確性ですが、ここは正直かなり解釈によると思います。なので個人的な解釈を書きますが、Danbooruを「画像へのタグ付けサイト」とした場合はサイトの機能及びタグ等が主となり、次に引用した画像となるためおおよそ問題ないのではないでしょうか。

引用について一番危ないところが恐らくこれなのですが、標準で表示される画像の大きさから考えてもサイトコンテンツ(メニューやタグなど)が主であると言えるのではないかと思います。


次に2の明瞭区別性についてはサイトメニューが上、情報が左もしくは下で右中央の画像と分けられているためこれも問題ないと思います


3の必要性についてですが、Danbooruはイラスト等のアップロード、共有、および表示を可能にする画像共有サイトであると記載があります。更にDanbooruではアップロードされた画像についてタグ付けを行い分類するという機能があるので、これがこのサイトに引用する必要性に当たるのではないかと考えます。


4の出典元の明記ですが、これも画面左側上部にアーティスト名、左側下部にInformationとしてSource、つまり引用元の記載があります。


最後に5の改変についてですが、解像度の高い画像については縮小をしています。その代わり画像上部のリンクをクリックすれば元の解像度の画像を表示するようになっているため、改変もなしと言えるでしょう。


そういうわけで、結論としては「Danbooruにある画像は無断転載ではなく引用である」と言いたいのですが、これはあくまで私個人の見解です。それこそ画像の作者さんであれば全く違う見え方がするでしょうし、ここに書いてあることはこじつけだと言われても仕方ありません。

そのため、真の結論としては最初に書いた通り「実際に裁判にならないとわからない」です。

ちなみに、引用は作者に許可を取る必要はありません。つまり「無断引用」というものは存在しません、そもそも無断で行って良いことなので。これは何らかのプロフィールなどに無断転載、無断引用禁止と明記したとしても無効です。


著作物ではない可能性って?

ここからは完全に蛇足になりますが、著作物ではない可能性について記載しておきます。これはDanbooruとは無関係なのですが、そもそも二次創作物には著作権は発生しないと思われます。そのため、仮に引用でなく転載だったとしても絵を描いた当人は著作者ではないので転載先サイトを訴えることなどはできないでしょう。

二次創作における著作権法については以下を参照してください。

ベリーベスト法律事務所 船橋オフィス:二次創作やパロディは法律違反? 著作権法違反となる行為を弁護士が解説

二次創作が問題ないのは著作権者から許可をもらった場合のみで、それ以外は著作権法違反です。


最後に

今回の騒動を受けてDanbooruはちゃんと著作権違反なら言ってくれたら画像削除しますよ、という声明をContactに記載してくれています。その中でも重要だと思ったことを引用して終わります。

例えDanbooruに一度も上がっていない絵でも、PixivやTwitterに掲載されてる時点でNovelAI等に収集される可能性が高いと思っていいでしょう。

つまりNovelAIがDanbooruから収集できる絵は、そのままPixivやTwitterから収集できるものでもあると考えていただければ幸いです。

そもそも、NovelAI等のAIアート生成サービスの殆どは、Stability.ai社が提供しているソフト、Stable Diffusionをベースにして、各自のAIモデルを仕上げています。

Stable Diffusion自体は、50億枚もの絵をインターネットのいろいろなところから学習データとして収集することで出来上がったものです。

それこそ、絵師様がよく使ってるTwitter、Pixiv、ArtStation、DeviantArtなどのサイトだけでなく、Reddit、Pinterest、Facebook、Google画像検索などなど無数に、ということです。

Stable Diffusionの中に取り込まれている絵であれば、今更Danbooruから削除しても効果は薄いと思われます。


つまり絵師様にご理解していただきたいのは、AIアート生成サービスのAIモデルはDanbooruだけでなく、インターネット全体を糧にして学習を行っていることです。

絵はインターネットのどこかでオープンに公開されてる以上、学習データとして取り上げられる危険が常にあります。

AIモデルの開発者に問い合わせする以外に、それを防ぐ方法はありません。

Danbooru: Contact より引用

このブログの人気の投稿

WaifuDiffusion 検証 イラストその他スタイル編

WaifuDiffusion 検証 Step CFGScale Sampler編